とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。

 朝から続く痛みと衝撃を受けるほどの激痛に、淑女教育もぶっ飛びそうだった。でもここで私が痛みに泣き喚いたらライオネル様にご迷惑がかかってしまう。
 こんな密室で嫌いな女に泣かれたら、地獄以外のなにものでもないだろう。ライオネル様に迷惑だけはかけまいと、必死に痛みに耐えていた。

 それきりライオネル様も口を開くことはなかった。
 
 馬車を降りるときはもう立ち上がるのもつらかったけど、なんとかライオネル様を見送る。

 頭がうまく働かず、事前に書いておいた手紙の存在も忘れてしまった。最後の気力を振り絞っていたけど馬車が見えなくなったところで、わたくしはその場に倒れ込んだ。 



 次に目を覚ますと、オレンジ色の光が窓から差していた。
 喉がカラカラで飲み水がほしい。ゆっくりと起き上がると、歯の痛みは少しマシになっている。

「お嬢様! 目を覚まされたのですね! お水でございますか? すぐにご用意いたします」

 そう言って、そばに控えていたメイドが慌ただしくベッドサイドの水差しから、適度に冷やされた果実水を差し出してくれる。

「ああ、よかった。今奥様をお呼びします。旦那様ももうすぐ戻ってこられますから、お待ちくださいね」

 メイドから部屋から出ていって、すぐにお母様がやってきた。