とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


 そうしていつもと変わらない日常が過ぎていく。
 送迎の馬車の中では、ライル様の膝の上がわたくしの指定席となり、ランチの時間は転移魔法で魔法練習場の裏まで移動した。

 シルビア様は内密に王太子妃教育が始まり、毎日忙しく過ごされている。わたくしができることは仕事を引き受けたりしているけれど、昨年よりも楽なのはなぜだろう。


 ああ、でもひとつだけ困っていることがある。

「ライル様っ、もうこれ以上はダメです……っ!」
「どうして? 僕はもっとリアに触れたいけど」
「だってこれから授業があるのに、わたくし力が抜けてしまいます……!」
「触れるだけのキスでも、ダメ?」

 ライル様が結界の朝と帰りの馬車の中で、たくさんのキスを降らせてくるのだ。

 膝の上に腰を下ろしていて、ガッチリと抱きかかえられているから逃げたくても逃げられない。
 しかも困ったことに、それも嫌ではないのだからどうしようもない。

「ダッ、ダメではないのですが——」
「なら大丈夫だね」

 そしてわたくしの頬へチュッと触れるだけのキスをする。
 いつもは冷酷な光を灯すアイスブルーの瞳は燃えるような激情を秘めていて、まっすぐに見つめられたら逸らすことができない。