とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


 保健室へ行って治癒魔法をかけてもらったけどまったく治らないし、いったいどうしてしまったというのか。
 もうすぐ屋敷に戻れるからと自分を奮い立たせて、なんとか馬車に乗り込んだのだ。

 だけど、先ほどの痛みが尾を引いていて笑顔を貼り付けることしかできない。

「ハーミリア。なぜ、いつものように話さない?」
「…………」

 確かにいつものわたくしなら、婚約者である貴方へ嬉々として話しかけまくっておりましたわ——でも、どんなにお話ししたくとも、今は無理ですの。

「……具合が悪いのか?」
「…………」

 ああ! せっかくこんなにもライオネル様が話しかけてくださってるのに、返答できない自分が恨めしいですわ!!

「ハーミリア?」

 いつもの怜悧な瞳は不安げに揺れて、わたくしを見つめている。
 あー、ダメですわ。
 もう痛みのあまり頭が朦朧としてきて、なにも考えられません。


 朝からずっと歯が痛くて口も開けませんし、なあーんにも話せませんわっ!!