わたくしはハーミリア・マルグレン。父がこの王国の伯爵として日々領地経営に勤しんでおり、なに不自由なく十分な教育を施されて育てられた。
 淑女としての立ち居振る舞いの始まり、語学や歴史、はたまた魔法学や剣術までも幼い頃より学んできた。

 もちろん貴族としての義務も心得ているし、当然のように婚約者もいて貴族令嬢としてつつがなく過ごしている。

 わたくしの婚約は六歳の時に結ばれた。
 どういった経緯で縁が結ばれたのか、わたくしたちからしてみれば格上のタックス侯爵家のしかも嫡男ラオネル様が婚約者になった。

 ライオネル様は大変な努力家だった。
 お顔立ちは神殿にある彫刻のように美麗で麗しく、アイスブルーの瞳は鋭く真実を見抜く。でもそれに驕らず陰では勉学に励み、魔法の練習も欠かさなかった。
 どんな相手にも物おじせずに意見を述べるし、公明正大な人格者だ。だから貴族や裕福な商家の令嬢や子息が通う学院では常に人に囲まれている。