とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


 ああ、もう至福のランチタイムが終わってしまうのね。ライオネル様がなにか言いたそうになさってるのはわかるのだけど、どうされたのかしら? 
 婚約者の気持ちを推し量れないなんてまだまだ修行が足りませんわ。

 なおもジッと見つめてくるライオネル様に、どうしたのかと尋ねたかったけど、紙もペンも教室に置いてきてしまっていて筆談もできない。
 クラスが違うから次にライオネル様にお会いするのは帰りの馬車になる。

 そうだわ、帰りまでにお手紙を書いてお渡しすれば、わたくしの気持ちはお伝えできるわね。そうすれば余計なご心配をおかけしなくて済むわ。

 結局最後までお互い無言のまま、それぞれの教室へと戻ったのだった。



 帰りの馬車の中は、重苦しい沈黙に包まれていた。

 つい先ほど予想外の出来事に見舞われて、わたくしの精神状態は限界を迎えようとしている。

 いつも意地悪の一環だろうけど、ある女生徒がすれ違いざまにわたくしにぶつかってきたのだ。しかも歯の痛みがある左肩にだ。
 その衝撃で、一気に痛みが倍増して一瞬意識が飛びかけた。ここまでの痛みを乗り切った自分を褒めてあげたい。

 すでに帰りの時間で、ライオネル様が待つ馬車へと向かうだけだったのが幸いだ。