「まあ! ここはキャンピングスクールで来た海岸ですわね!」
「うん、リアと一緒にこの海辺を散歩したかった」
「ふふ、わたくしもですわ。来年まで来れないかと思ったのですが、ライル様のお陰でこんなに早く夢が叶いましたわ!」
収穫祭が行われる頃には、海辺は冷たい風が吹き付けて観光客もいなくなる。シーズンオフは寂しい景色となっていた。でも目の前の海は僕の悩みなんてちっぽけなんだと感じるくらい広くて、青い空を映して輝いていた。
黒髪に染めたリアは新鮮で、花が咲くような笑顔を浮かべてどんなものよりも眩しい。
張りのある透き通るような声で名前を呼ばれただけで、心が沸き立つ。どれだけ愛情を示しても足りない。愛してるなんて言葉だけでは、この気持ちをあらわせない。
だけど愛しすぎていつかリアが、僕から離れていくのではないかと不安でしかたないのだ。
「リア」
「はい、ライル様」
「ずっと僕のそばにいてくれる?」
そんな陳腐な質問しか出てこない。
こんな情けない僕を晒し出すのが怖くて、少しでもリアによく見せたくて短い言葉に隠して伝える。



