とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。

     * * *

 僕のリアが可憐すぎて、害虫ばかりが寄ってくる。

 迷子で声かけた男児は「お姉ちゃんお嫁さんにしたい」と言い出したので、リアは僕のものだから絶対に譲れないと理解させた。まだ子供だからと思っていたが油断ならない。

 戻ってきたら偉そうなどこかの貴族に絡まれていた。
 あいつらのリアを見る目には下心しかなかったから、二度と近づかないように追い払った。

 祭壇にたどり着くまでも僕のリアに見惚れる男が多くてどうしたものかと思ったのだ。しかもリアがそのことにまったく気付いていない。
 さっさと婚姻して、すべて僕のものにすれば安心できるのだろうか。

 こんなに不安になるのは、僕が自分に自信を持てないからだ。だって愛しいリアを前にしたら、本当に役に立たないダメ男になってしまうんだ。
 もしリアに拒絶されたら、みっともなく泣いて縋るには間違いない。マジックエンペラーになっても、そういうところは変わっていないんだ。

 だから、今だけでも僕に独り占めさせてほしい。
 嫉妬にまみれた醜い欲望は押し込めるから、僕にだけリアの笑顔を向けて。
 僕にだけリアの瞳に映して。
 
 そんな気持ちで転移魔法を使った。