とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


「貴様、どこから現れた!?」
「転移魔法を使っただけだ。それより、僕の婚約者に話しかけるな」

 絶対零度の怒りをまきちらすライル様も、今の衣装にすこぶるハマっていて素敵とうっとりしてしまう。

「て、転移魔法だと? そんな、あれはマジックエンペラーしか使えない世界最難魔法だぞ!?」
「リア、結界を張る。ここから動かないで」

 ライル様がわたくしに手をかざすと、周りに侵入不可避の結界が施された。
 そして次の瞬間には、ウィンター伯爵の背後に転移魔法で移動してその首元にあるタイだけを凍らせる。ウィンター伯爵は「ひっ!」と短く悲鳴を上げてガタガタ震えはじめた。

「これで理解できたか? 誰の婚約者に無礼な真似を働いたのか」
「も、申し訳ございませんでしたーっ!!」

 そう言ってウィンター伯爵たちは大広場から走り去っていった。ライル様に視線を戻すと、思いっ切り眉間にシワを寄せている。

「やっぱりダメだ、リアが可憐すぎてうじ虫が寄ってくる。リア、場所を変えてデートしないか?」

 ライル様に褒められてソワソワしてしまうけれど、一緒にいられるならどこでもかまわないので頷いた。
 そっと抱きしめられて転移した先は、キャンピングスクールで訪れた海岸だった。