大広場に入るとさまざまな出店が並び、大勢の人たちが祭壇へと向かう流れに沿ってゆっくりと足を進めていた。
出店は肉からスイーツまでよりどりみどりだし、他にもくじ引きや弓矢で景品を狙ったり、中には魔法を使って的を射るものもあった。
「いろいろな出店があるのですね。わたくし王都で祭壇に祈祷するのは初めてですわ」
「そうだね、今までは領地の収穫祭に出ていたからね。あちらはあちらで楽しいけれど、ここは賑やかだね」
「ライル様、出店には寄っても大丈夫ですか? ジュリアス様に迷惑はかかりませんか?」
王太子殿下と一緒の行動であれば警備の心配もあるかと、ライル様に尋ねた。
「ああ、広場からは別行動だから問題ない」
振り返ってみると、後ろにいたはずの王太子殿下とシルビア様の姿はなかった。
「ジュリアス様への恩返しで、最初からその予定だったんだ」
「まあ、そうでしたの。それなら心配は不要でわね。シルビア様もまんざらでもない感じでしたし」
「うん、できるならジュリアス様にも好きな人と結ばれてほしいと思う」
ライル様の瞳に浮かぶのは、友情と敬愛だ。マリアン様の件では王太子殿下が一番力になってくれた。王族として悲しい決断を下して、あるべき姿を見せてくれた。
あの方なら尽くしたいと思える王だと、わたくしも思う。



