王太子殿下の言葉に、ライル様が感無量といった様子で震えている。
ラブラブバカップルを目指すと決めた時に、まさかここまでやるなんて思っていもいなくて狼狽えたこともあったけれど、今はいい思い出だ。
これからは平穏な生活が待っているのね……! 甘々なライル様もドキドキして素敵でしたけど、やっぱり適度な距離感は必要なのよ。わたくしの心臓がもたないもの。
「リア! やっと僕たちはラブラブバカップルになれたようだ! これで少しは邪魔する者がいなくなればいいのだけど……」
「ライル様、きっともう大丈夫ですわ。少なくともこの会場にいるみなさまは認めてくださいますし、噂も広がればそれが真実となって伝わりますわ」
これはわたくしが身をもって体験しているから間違いない。陰口のような噂も、心ない噂も、嘘にまみれた噂も、すべてそれが真実だと言わんばかりに流れていった。
わたくしたちがラブラブバカップルだと噂が広がれば、マリアン様とライル様の噂も消えていくだろう。
「あ、でもわたくしつい先ほど平民になったのですわ。このままではライル様の婚約者ではいられませんわね……」
ライル様は侯爵家の嫡男だ。身分差は無視できない。
「それも問題ない。マジックエンペラーの名に置いて、リアをマルグレン家の籍に戻す。殿下、よろしいですね」
「もちろんだ。もともとマリアンが原因であるし、書類上はなにも手続きしていないから今までと変わらない」
わたくしが決死な覚悟で申し出たことも、あっさりと元に戻ってしまった。



