「……シュラバンに、嫁ぎます……」
それでもマリアン様が選んだのは、王族としての暮らしだった。消え入りそうな声だったけど、しっかりとそう答えた。
「わかった。ではマリアンはシュラバンに嫁ぐまでの間、西の塔にて謹慎を命じる。……連れていけ」
ほんの一瞬、王太子殿下の瞳が悲しげに揺れたように見えた。
でもこれで終わった。クリストファー殿下も、さすがにおとなしくしている。
わたくしの前に濃紫のローブを羽織ったライル様がやってきて、そっとその腕に包み込まれた。
「これですべて片付いた。やっとリアとの時間を過ごせる」
「ライル様……! わたくしの実家の領地まで守ってくださりありがとうございます!」
「リアの大切な人たちがいるのだから当然だ。これからも僕が守るよ」
わたくしは込み上げる気持ちをそのまま言葉に変えた。なにも飾らずにただ、わたくしの心の声を伝える。
「ライル様……愛してますわ」
「っ!!」
ライル様は言葉に詰まって、みるみる頬を染め耳まで赤くしていた。
こんなライル様は初めて見る。
そういえば、こんなにストレートにわたくしの気持ちを言葉にするのは、ライル様が泣いて縋ってきた日以来かもしれない。
好意は前面に押し出していたので、うっかりしていた。



