その他にもと、ローザ様とテオフィル様から次々とマリアン様の悪事の証拠が明らかにされていった。
「ちょっと! もうやめて!! お父様、お兄様を止めてくださいませ!」
「マリアン……それは無理だ」
「どうしてですの!?」
「これ以上ライオネル様に逆らえば、この国は滅びる」
「そんなの大袈裟ですわっ!」
マリアン様がどんなに叫んでも泣き喚いても、もう手を差し伸べる者はいなかった。
静かに王太子殿下が諭すように言葉を続けた。
「マリアン、マジックエンペラーを敵に回すということは魔法連盟を敵にするということだ。世界中のトップクラスの魔道士たちを敵にして生き残る道はない」
「嘘よ……嘘……こんな……」
マリアン様は真っ青な顔で床に座り込んだまま、項垂れている。そんな彼女に王太子殿下が最後の沙汰を言い渡した。
「マリアン、お前にはふたつの選択肢がある。最北の地にある修道院で命尽きるまで神に仕えるか、海の向こうにあるシュラバン王国の第十五妃として嫁ぐか。好きな方を選べ」
最北の地にある修道院は主に罪を犯した女性が送られる場所で、この国で最も過酷な環境の中にある。半数は逃げ出すが山を越える際に魔物に食われるか、飢えや寒さで命を落とすか、そんな場所だ。
もうひとつのシュラバン王国は一夫多妻制で、今の国王には十四人の妃がいる。でも相次いで妃が亡くなるため入れ替わりが激しく、王妃だけでも二度は代わっていた。一度嫁げば二度と帰ってくることはない、黒い噂の絶えない嫁ぎ先だ。
どちらにしても生き地獄のような環境だ。



