とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


「そうか、お前がリアに言い寄っていた帝国の第二皇子か」
「っ! ここで俺と勝負しろ! 勝った方がハーミリアの婚約者だ!」

 そこでライル様が指を鳴らすと、会場中の氷が消え去った。

「わかった、決闘だな。そうだな……魔法で勝負するのはフェアではないな。剣の勝負でいいか?」
「勝負は一度きりだ」
「ちょうどいい、ここにいる者たちには証人になってもらおう。危険が及ばないように結界も必要か」

 ライル様が手をひと振りすれば会場の貴族たちは転移魔法で壁際に移動させられ、ぽっかりと開いたダンススペースに結界が張られた。その中央でふたりは騎士から借りた剣を構えている。

 そんな人を景品みたいに扱うなと声を大にして言いたかったけど、ライル様に微笑まれてうっとりしていたら真剣勝負が始まってしまった。

 ライル様が負けるわけないと信じてるけど、少し分が悪い。だってライル様は唯一剣が苦手なのだ。昔から優しすぎて強く攻め込むことができなくて、いつも負けていた。