とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


 そんなわたくしの幸せタイムをぶち壊したのは、マリアン様だ。一気に現実に引き戻される。そういえば、わたくしは平民になった挙句、騎士に捕らえられるところでしたわ。

「……お前、誰に向かって口を利いている?」

 聞いたことがないくらい、ライオネル様の声が冷たい。ここまで温度を感じないのは初めてだ。

「誰って……ライオネル様? 私と婚約するのに、他の女を抱きしめるなんてひどいわ!」
「僕はお前と婚約するなど、ひと言も言っていない」
「え? だって準備するっておっしゃったでしょう!」
「ああ、リアを守るための準備をするということだ。勘違いも甚だしい」
「んなっ、なんですってぇぇ!?」

 わたくしを腕に抱いたまま、ライル様がマリアン様にブチ切れている。こんなライル様を前にして、マリアン様は平気なのかしら!?

「いい加減、不敬が過ぎるな」
「——っ!?!?」

 ライル様が右手を壇上にかざすと、マリアン様は口を抑えて必死になにかを訴えて始めた。

「耳障りだから口の中を凍らせただけだ。息はできるから死にはしない。これ以上騒ぐなら頭ごと凍らせる」

 その言葉にマリアン様が真っ青な顔で膝から崩れ落ちた。