さっきまで機嫌の悪そうだった試験官は、慌てた様子で注意事項を説明してくれた。意外と心配性な人なのかもしれない。
「問題ありません、では早速鍛錬を始めます」
「おい、お前……ライオネルと言ったか。なんでいきなりこんな危ねえ試験受けた?」
「……この世の誰よりも愛しい人を守るためです」
「はっ、女のためか! そんな奴は初めてだ、面白え。ライオネル、必ず生きて戻ってこいよ」
「もちろんです。彼女のそばにいたいですから」
そうして試験官が転移魔法で姿を消した後、名前を聞き忘れたと思った。
「まあ、戻れば合格だと言っていたし、なんとかなるか」
それから僕はひたすら襲いかかる魔物を倒して、食料は自給自足で魔物を倒しては火魔法で炙って食し、木の実や果実を採取して餓えを凌いだ。
こうして不得手な火属性を徹底的に鍛え上げてまずは上級の炎属性の魔法を使えるようにした。
たったこれだけの訓練なのに、不器用な僕は二週間も費やしてしまった。ふとした瞬間に思い出すのはリアの弾けんばかりの笑顔だ。
太陽みたいに笑うリアの笑顔を直視できなくていつも視線を逸らしていたけど、瞼を閉じれば鮮明に浮かび上がる。



