受付の女性が案内してくれたのは、王城の地下にある試験専用の部屋だ。少し待っていると、転移魔法でひとりの魔道士が現れた。濃紫のローブを羽織り、不機嫌そうに口元を曲げている。フードの下からは真紅の瞳が覗いている。
「マジックエンペラーの試験を受けたいのお前か?」
「はい、ライオネル・タックスと申します」
「ったく、オレの安眠の邪魔しやがって。タイミング選べよ!」
「それは申し訳ありません。ですが僕も急いでますので」
「ああ? んなこと知るか! とにかく、これから特殊な結界の中に送ってやるから、そこから自力で出てこい! 転移魔法使わないと出てこれないからな! いいな!?」
「はい、お願いします」
試験を受けさせてくれるなら問題ないと同意した次の瞬間、真っ白な光に包まれ思わず目をつぶる。
光が収まったようなので恐る恐る目を開けると、鬱蒼と木が生い茂る森の中にいた。
「ここは魔境の森だ。魔物がわんさか湧いて、超強力な結界の中だから物理的な方法で外に出られない。ここから出る方法はひとつ転移魔法を使うことだ」
「なるほど、では転移魔法を使えれば合格ということですね」
「あ、ああ……わかってると思うけど、転移魔法は全属性を鍛え上げて尚且つ鍛錬しないと使えない。使えなければいつか魔物の餌になる。死ぬかもしれない危険な試験だ」



