とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


「わたくしはこの時をもって、マルグレン伯爵家と縁を切ります。これからわたくしが申し上げることは、伯爵家とはいっさい関係ございませんことをご理解ください」

 遠くでわたくしを呼ぶお父様の声が聞こえた。でも、たった今縁を切ったのだから反応するわけにはいかない。

「わたくしはライオネル様以外と添い遂げる気はございません。もしそれが叶わぬのなら、今この場で処刑してください」

 わたくしの言葉に甲高い悲鳴が上がる。お母様だとすぐにわかった。でもごめんなさい、この賭けに巻き込むわけにはいかないの。

「ハーミリア! どうして……黙って俺のもとに嫁げばいいだろう! 決して不幸にはしない!!」

 クリストファー殿下は叫びながらわたくしに詰め寄る。きっと彼はここまでことを大きくすれば、いくらわたくしでも話を聞くと思ったのでしょうね。壇上で真っ赤な顔で怒りに震えているマリアン様も同じだわ。

「いいえ、ライオネル様と添い遂げられない時点で、わたくしは不幸ですわ」
「……っ! そんなに……そこまで俺を拒否するのか!? この場にも姿を現さない奴だぞ!!」
「十年ですわ」
「な、なに?」
「わたくしとライオネル様は十年間、婚約者として互いを思いやり尽くしてきましたの。まあ、不器用な方ですから誤解もたくさんありましたけれど」