「話は変わりますけど、私ひとつお伝えしなければならないことがございますの」
「はい、どのようなことでしょうか?」
「私、ライオネル様のファンクラブを退会しましたわ」
「ええっ! どうして——」
「だって、し、親友の婚約者のファンクラブにいつまでも入っているわけにいかないでしょう!」
今度は林檎のように頬を染めて、早口で捲し立てるシルビア様が本当にかわいらしい。そして、どうやら友人から親友に昇格したようだ。シルビア様の言葉に自然と笑顔になってしまう。
「違いますのよ! いえ、違わないのだけれど、私だって王太子殿下の婚約者候補ですから、そろそろお遊びは卒業しなければと思っていたのですわ!」
「そうですね、国内のご令嬢から選ばれるならシルビア様一択だと思います」
王家に忠誠を誓うモラクス公爵家のご令嬢で年齢も二歳差、学業も魔法も学年で五本の指に入る優秀な学生だ。真っ直ぐな心根は公正な国政を進めるのに相応しい。
補佐につく家臣をしっかり選べば、あとは強かな王太子殿下の采配で
うまくやれるだろう。
「シルビア様が王太子妃として活躍されるのを、わたくしは楽しみにしてますわ」
「気が早いですわ、殿下が卒業されるまで誰が婚約者になるかわかりませんのに……」
そんな会話をしていたわたくしたちに影が落とされた。



