「ハーミリア、あの時の礼をしてくれるよな? 右も左も分からない俺にこの学院のことを教えてくれ」
「……かしこまりました」
非常に面倒な事態になった。
ただでさえライル様と会えず悶々としているというのに、神経を使う相手の世話係に指名されてしまったようだ。たかだか小国の伯爵令嬢でしかないわたくしは、帝国皇子の申し出を断る術がない。
「ああ、授業で使う教本もまだ用意できてないんだ。悪いが一緒に見せてもらえるか?」
「……どうぞ」
いや、サラッとこの学院の制服を着ている帝国の皇子が、教本くらい用意できないわけないでしょう! しかも帝国のクリストファー皇子といえば、わたくしよりも二学年上ではなかったかしら!?
という言葉はなんとか飲み込み皇子様の言葉に従う。ここで機嫌を損ねてもいいことなんてひとつもない。
はああ、伯爵令嬢のわたくしには荷が重すぎるのだけど!?
ギラギラと光る琥珀色の瞳にゲンナリしつつ、休み時間に学院内を案内することにした。



