とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。


 不安で揺れるわたくしに明るく声をかけてきたのは、同室で宿泊するシルビア様だ。

「ハーミリアさん、あれを見て! 話には聞いていたけれど、海はこんなにも青くて広くて心躍るものなのね!」
「シルビア様の領地は北方の山脈付近ですものね」


 シルビア様の領地は山に囲まれているから、海を見るのは初めてらしい。いつもはツンとすました淑女らしい立ち居振る舞いなのに、今は年相応の少女のようにはしゃいでいた。

「そうですわ! 後で海辺に行ってみましょう。あの大海原を前にして、そんな暗い顔をしていたらもったいないですわ」

 それでもわたくしを友だと認めてくれて、ライル様がいない不安を抱えているのをさりげなく励まそうとしてくれる。素直じゃないけれど、温かい心の持ち主であるシルビア様にわたくしも笑顔になった。

「ふふ、そうですわね。後でたくさんライル様にお土産話ができるように、わたくしも楽しみませんと損ですわね」
「そうよ! ハーミリアさんはそれくらい図太くいてくださらないと、私の調子が狂いますわ」
「シルビア様のおかげで、もう大丈夫ですわ」

 頬を染めて「それなら結構ですわ!」とそっぽを向いたシルビア様は、相変わらずかわいらしかった。
 普段なら侍女が付き添う旅行も、学院の行事なので荷物の整理は自分でしなければならない。そういったことを経験するのもこの旅行の目的のひとつだった。