「ああ、そうだわ。ひとつお伝えしていなかったわね。ハーミリアさんは今日から元のクラスに戻られているから、なにも心配はございませんわ」
「なっ……!」
「うふふ、お父様にお願いしたの。ライオネル様の学業に支障が出ているようだってお話ししたら、学院長に命令してくださったのよ。今後はハーミリアさんとの接触も禁止していただかないといけませんから」
ギリッと奥歯を噛みしめた。
なんの話もしていないのに、突然元のクラスに戻されたらリアの柔らかい心は傷ついてしまう。
この女……許さない。今までは王女だと思ってきたから多少のことは見逃してきたが、もう絶対に許さない。
「今後、もしライオネル様がハーミリアさんに接触されたら、彼女の領地に魔物が大量に発生することになりますわ。ふふっ、メモ紙ひとつも見逃しませんので、お気をつけくださいませ」
マリアン様はますます醜く顔を歪めて、僕の胸元に手を添えた。決定的な言葉を吐いたと気付かない愚かな王女は、機嫌よさそうに笑っている。
リアの領地をたてに脅迫をしてくるなど……なめられたものだ。
相手が誰であろうと、僕のリアの敵ならば容赦しない——
燃え上がった怒りの炎は瞬時に霧散し、冷酷無常な思考が心を凍てつかせる。
猛スピードで敵を排除するための策略を組み立て、ひとつのプランができあがった。
リアに決して向けることのない絶対零度の微笑みを浮かべて、王女に視線を向けた。
「わかりました。では、こちらにも準備がありますのでお時間をいただきたい。しばらく学院には来れなくなりますので、殿下にも挨拶をしてまいります」
「ええ、もちろんですわ! 学院でのことは私にお任せください」
僕の浮かべた笑みの意味に気づかず、王女は嬉しそうに頷いた。ローザ嬢とテオフィルは青ざめた顔をしていたから、少しは空気が読めるらしい。
絶対零度の怒りを抑えることなく生徒会室を後にして、殿下の教室へと向かった。



