だからあなたがどうこう言える話でもなければ、あなたが一番にそれを言ってはいけないというのに。
───執事の、あなたが。
『執事としてではなく普通の男としても言っていいならば…っ、や、やめろと言いたいです…!!』
変わらないでほしいと思った。
この男にだけは、たとえ私がこの先どんな人と結婚しようとも。
そこに愛情なんかなくて、自由な恋愛ができなくとも。
碇だけは変わらず賑やかで、ずっと手のかかる執事でいてくれたなら。
私はそれだけで幸せだと、初めて思った。
『───…ありがとう』
『理沙お嬢様…、』
『碇、あなたはずっと私の執事でいなさい。それだけで…いいわ』
笑ってみせた。
無邪気に、だけどもう17歳。
子供ではないと思わせる微笑みをひとつ。
『……なにをしてるの、碇、』
『手、手が滑ってしまって…!』
私を抱きしめて、そんなことを言ってくる。
不慣れな腕の動きは絵に描いたようにぎこちなくて、受けているこちらが不安になりそうだ。