もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





なんとも楽しい食事だ。

たまに他愛ない話を繰り広げては、碇は出会ったばかりの頃からよく質問を投げかけてくれる。



「理沙お嬢様、手前を失礼いたします!」



食後のデザートはシェフイチオシのいちごタルト。

ひとつぶ5万円以上はするらしく、テーブルに置かれただけで艶と色が物語っていた。


そしてそんなときは必ず、執事がお嬢様の首元に食事用エプロンを取りつける。



「……なによ、」


「あっ、いえ…!」



目が合うだけでこんなにも気まずくなってしまったのは初めてだった。


首に腕が回されて、抱きしめられてる…なんて思うことだって。

その動きひとつひとつがスローモーションに感じることだって。



「…碇、まだなの?」


「……すみません、もう1度結びなおします、」


「え、」



───ふわっ。

さっきよりも身体が密着しているような気がする…。



「……理沙お嬢様、」


「ひゃぁ…っ!」



不意うち、だ。

完全にそれは不意うちとして耳元に響いたとき、悲鳴のような声と、ビクゥッと激しいまでに肩が跳ねた。