大失態をしてしまったと顔を青ざめさせた碇は、飛び出すようにドアの先へ。
そう、あれが碇。
このちょっと残念な男が私の専属執事なの。
「…ヘタレのくせに……なんなのよ、」
ドキドキドキと心臓がうるさい、というよりは苦しい。
握られていた手が熱くてたまらない。
……こんなの、初めてだ。
「こちら、カスピ海で採れた海鮮とキャビアを使ったマリネでございます!
それからメインであるカチャトーラは、なんとシェフが選り抜いた数十種類のハーブが使用されているんです!」
斜めうしろに立つ執事は、ひとつひとつ嬉しそうに説明してくれる。
それが私の食事風景だった。
でも面白いのは───、
「どんなハーブを使っているの?」
「えっ、あっ、えっと、それは……た、たくさん…です、」
こうして私が質問をすると、ぜったい答えられないところ。
「…申し訳ございません…、情報不足でした…、」
「ふっ、逆に答えられたら私がびっくりするわ」
「………。」



