当たり前だと思っていた。
婚約者がいるのは当たり前、それを親が決めてくることは当たり前。
お金にも困ってこなかったし、欲しいものは基本なんだとしても手に入る。
そうやって生きてきたはずなのに、本当に欲しいものはお金で買えるものじゃないんだと気づかされた今。
「っ…、」
「…理沙お嬢様、」
言葉になんかできない。
だから私には難しいの。
お嬢様がしっかりしてこそ、仕える執事のランクだって上がるはずなのだから。
平気よ、大丈夫なの、生意気いわないで碇。
そんなふうに心では何度も何度も平然と繰り返してはいるけれど、
こんな楽しい毎日がいつか崩れてしまうんだと想像したら怖くなった。
「理沙お嬢様、身勝手ではありますが……言わせてください」
私の震える手をそっと掴んで、握って。
さっきのマヌケ面はどこへ行ってしまったのかと思うくらい、真剣な目が見据えてくる。
「早く破談してください、お嬢様。」
「っ、…そんなの、」
「俺はそれを望んでいると言いました。もちろん今も変わっていません。…この先も、ずっと変わりません」



