「わっ、だめですこれは…!撮り直しましょうお嬢様…!」
「いやよ、これでいいわ。これが碇だもの。あとで私にも送っておきなさいよ」
「……理沙お嬢様のなかで私のイメージはどうなっているんでしょうか、」
目をまん丸くさせて、私のほうを向いている碇。
私も私で笑っているとは言えないけれど、リラックスしているなかにある、ほんのわずかな緊張が伝わってくる表情をしていて。
「碇、こっち向いて」
「?どうかされ───」
カシャッ。
マヌケな顔がもう1枚。
今度は私が手にするスマートフォンの外カメラ、気づいた執事はあたふたし出す。
「えっ、いまっ、ちょっ、」
「ふふっ、やっぱりあなたはこうでなくちゃね」
「……喜んでもらえて何よりです、」
待ち受けにでもしておこうかしら。
これを見ればいつだって笑顔なることができそうだから。
「…きっと、こういうのもできなくなるのね」
「え…?」
ぽつりと、私の小さな声が部屋に響いて消えた。
そんなたった一言で、それまでの楽しかった雰囲気は戻そうとしても見失っているくらいのものに変わってしまう。



