こんな男を前にして言えるわけないじゃない…。
私が言葉に詰まらせれば詰まらせるほど、どんどん追い討ちをかけてくるのが佐野様だ。
「おい理沙!!九条の娘としての誇りと自覚はないのか…!!」
「黙れ。…どうだっていいんですよ、そんなこと」
「なっ、どうだっていいわけないだろ…!!勝手なこと言うなCランクごときが!!」
「───理沙お嬢様、」
「…!!」
騒ぐ婚約者を無視して、碇は私の前に片膝をついた。
右手は心臓、左手は背中。
そうして忠誠を誓うように見上げてくる。
「あなたのお気持ちを聞かせてくださればいいのです。九条も佐野も一切考えないで、私のことだけを見てください」
「……碇…、」
「はい」
ほんとうに、なんでも聞いてくれるの…?
どんなことだとしても、聞いてくれる…?
そうすることであなたの立場を失ってしまうかもしれないのよ……?
「っ……、」
それを考えると、やっぱり首を横に振ってしまった。
こんな血だらけの専属執事を前にして言えるわけがない…。
もうあなたは十分なくらい私のせいで傷ついてしまっている。



