「…いかり、」
碇、本当はさっきだってあなたに守ってもらいたかったの。
「碇…、…助けて、」
聞こえてなんかない。
彼がいる場所はここから遠い。
やっと素直に指示が出せるようになったと思えば、こんなにも最低な瞬間だなんて。
「理沙…っ、はやく逃げて…っ!!」
「だからなにしてんだよあいつ…!!アリサはここにいて…!!」
「あなた達は下がりなさい…!!」
「「「きゃああーー…っ!!」」」
もう、誰が誰の声か分からない。
これ以上の怪我人を増やすまいと先生たちは生徒を避難させて、エマは私のうしろで叫んでいる。
再び向かってこようとしているのは早乙女さんだろうか。
とうとう武器を手にした男を前に、執事たちもお嬢様を守ろうと飛び出す音。
「……いかり…、」
さすがにここまでくれば、グラスひとつだとしても凶器だ。
それで頭を殴られるとどれほど痛いのかしら……なんて、虚(うつ)ろな思考はそれくらいしか考えられない。
─────パリン…ッッ!!!
「きゃあああ……っ!!」
「こんなの事件よ…っ!!」



