『でもあるとき、これは馬鹿にされているんじゃなく誰かを笑顔にできているんだって、前向きに思うことにしたんです』
『……あなたらしいわ』
『ははっ、そうでしょう?考え方を変えてみるだけで自分まで嬉しくなる。
そうやって生きていたある日、なかなか本当の笑顔を見せてくれない女の子に出会ったんです』
まだ子供と言える年齢なのに、大人ぶってつんけんしていた女の子。
誰かのことも自分のことも認めてあげることが苦手で、純粋な気持ちさえ自分自身で無理やりに押し込んでしまう、その女の子は。
『とても…寂しい目をしていました』
『寂しい目…?』
『はい。けれど…心の奥には純粋で無邪気な優しい気持ちを隠している子です。
そんな子がね、失敗ばかりの私を見て“バカね”って、心からの笑顔で笑ってくれたことがあったんですよ』
そのときは分からなかった。
碇が私のことを言っているなんて。
『その笑顔は、今まで私を見て笑ってくれた笑顔のなかでいちばんに可愛らしくて素敵なものでした。
彼女の笑顔を誰よりも近くで見つづけたい───それが、私が執事を続けている理由です!』



