そんなのとっくに分かっている。
俺はもう、俺なりに理沙お嬢様に伝えてしまった。
「こんなこと言うと理沙お嬢様には怒られてしまうかもしれませんが…、俺が育てたようなものじゃないですか」
「ふっ、ははっ」
珍しく吹き出した早瀬さん。
俺の言葉は、それくらいCランクと似合わなかったのだろう。
「でも確かに、それはわかる。俺はエマお嬢様に仕えたのは去年からだったが、俺たちしか見れない顔ってあるよな」
「はい。いつも隣にいるのは俺たちですから」
お嬢様という身分に生まれた、裕福な暮らしのなかで。
だからこそ一般家庭の人間とは比べ物にならない苦労だってある。
その頑張りをいちばん近くで見られることは、言ってしまえば執事の特権だ。
「俺は14歳の理沙お嬢様から知っているので……最初は妹のようにも思っていました」
生意気で、わがままで、負けず嫌い。
背伸びばかりをしているから、どこかで空気を抜いてあげないと心配になるような女の子。
だから俺を見て年相応に笑ってくれたときは、とてつもない嬉しさがあった。
ヘアカットだって、あれから美容師を利用することなく俺に頼んでくる理沙お嬢様。
「それを…あんなモラハラ男に取られてたまるかって話なんですよ」



