もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





だから止めてしまう。
だから諦めてしまう。

お嬢様任せにしてズルいことをして、彼女から指示が出るまで待ってしまう。



「早瀬さんのようなSランクだったら上手く対応できたのでしょうけど…、俺はそのやり方にすら戸惑うんです」



悔しかった。

佐野様に馬鹿にされて、理沙お嬢様に庇ってもらって。

そのとき何もできなかった、言えなかった自分が情けなくて大嫌いになった。



「関係ねえだろ、そんなの」


「え…?」



こんなにも賑やかなダンスパーティー。

執事の会話はすぐに溶けて消えてしまう。


それでも俺にはしっかりと、早瀬さんからの“同じ執事として”ではなく、“同じ男として”の強めな言葉が送られてくる。



「SランクだろうがCランクだろうが、大切な女性(ひと)を想う気持ちまでランクで決められるのか?」


「……でも俺は、」


「俺はエマお嬢様と関わるたびに、必ず自分は執事なんだって後付けで気づかされることがほとんどだ」



お前もそうじゃねえのか───と。

早瀬さんの目は、俺の答えをまっすぐ覗いてきていた。


……その通りだ、早瀬さん。


裏庭の猫を触ったとき。
写真を撮ったとき。

お弁当を作ってもらったとき、ベッドで一緒に寝たとき。