「このドレスだって…、お嬢様に怒られるつもりで選びました」
「私に…?どうして、」
「…わざと目立たないシンプルなものにしたんです」
そんなこと、わかっていた。
だから私は文句も言わずに着ているの。
そこでくらい“執事として”ではなく、“男として”のあなたの願いを聞いてあげたかった。
「私はあなたのそういう正直なところが……、嫌いじゃないわ」
正直なところが、好きよ───言えそうで言えなかった。
素直になろうと決めたのに言えなかったのは、言うことで逆に碇を悲しめてしまうんじゃないかと思ってしまったから。
「…ズルいですよ理沙お嬢様、」
なにがズルいの。
ズルいのはあなたよ、碇。
こんなふうに抱きしめてきて、佐野様と結婚なんかしたくないと思わせてくるんだもの。
「……碇」
「…はい」
「…時間、もう17時すぎてる」
「……え、…17時……?───っ!!もうそんな時間ですか…!?申し訳ありませんお嬢様…!!このっ、この腕が勝手に…っ」
「うそよ」
「へっ?」
ふふっと。
鏡に映ったのは、無邪気でいじわるに笑う、恋する女の子の自分だった───。
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