少しだけ素直になって、笑顔を見せてみてもいいかもしれない。
「碇。あなたを扱えるのが私しかいないように…、私なんかを扱えるのだって碇くらいよ」
これがきっと、お嬢様と執事というもの。
お互いがお互いを補っている関係だ。
エマと早瀬さんを見ていればよくわかる。
早瀬さんだって確かにSランクではあるとしても、完全に完璧ではないこと。
エマの屈託のなさは、彼ですらただの男にしてしまうから。
「理沙お嬢様、…俺には…、あなたしかいません」
「そんなの…当たり前じゃない」
小さな虫すら怖がるし、睨んだだけで怯えて、泳げないもの。
手のかかる子供みたいなときもあって、いつまで経っても格好のつかない残念なひと。
だけど、そこにある格好よさを見つけられるのは私しかいない。
そんなの、……私だけでいいの。
「俺が仕えたいと思うお嬢様も、理沙お嬢様ただひとりです」
シンデレラの気持ちが初めて分かったような気がした。
止まってはくれない限られた時間、魔法が解けて現実が戻ってきてしまうことに怯える気持ち。
もう少し王子様とふたりきりで踊っていたいって。
そんな私の王子様は、かなりヘタレな執事なのだけど。



