ドクドクと壊れてしまいそうなほど早く脈打つ心臓は、どっちの音なのかすらわからない。



「花咲音から聞いたよ。付き合ってたこと、言われたんでしょ?」



「……」



何も言わず、首だけ縦に振る。



「…言ったよね。なずなは僕の『初恋』だって。泥棒、って言ったのも…嘘つきは泥棒の始まりだって言いたかった。…違う?」



今度は首を横に振ると、「だよね」と相槌を打つ先生。



「僕の話、聞いてくれる?ちょっと長くなるけど…なずなには、どうしても聞いてほしいんだ」



「………」



それから話されたのは、先生の学生時代のこと。