「なずな…!」



「統和くん、待って…!」



走り出そうとする僕を、高校時代の同級生である花咲音が引き止めた。



男の僕よりも遥かに細く、力の弱い腕で僕の腕を必死に掴んでいる。



「っごめん、また今度会って話しでも…」



「ダメっ!」



振り払おうとすると、今まで聞いたことない大きな声で否定した花咲音に驚いて動きが止まってしまう。



「…なずなちゃんが、そんなに大事…?」



今にも泣き出しそうなほどか細く、弱々しい声がぽつりともれる。



「今更追いかけたって、もうわからないわ。だから…今この時間だけ、私にくれないかしら…っ?」



「……わかった」