普通の人なら、大抵こういうときはさらっと流すと思う。



「そっか」みたいな。



でも…この人はそういうのもしないし、見逃さない。



「“なんでもない”なんて顔、してなかったよ。また嘘ついて…なずなは悪い子だね?」



耳元で囁かれた低い声ゾクリとする。



同級生の男子とは違う、大人の男の人の声。



「っ、別に先生には関係ないでしょ。それと、名前で呼ばないでって何回言えば……!」



それを悟られるのが嫌で、必死に抵抗する。



でも、多分それも全部お見通し。



「じゃあ…“なず”、って呼ぼーか?ふっ、こっちのが可愛いからいいかも」



「っ…!」