歩道橋を下りながら、もう何度目かになるため息を吐いて目を閉じる。けれどそれがいけなかった。足元をよく見ていなかったせいで街路樹の塊に気づかず、葉っぱは雨で湿っていた。だから踏みつけた靴底がズルッと滑って、あっと思ったときには遅かった。
ぐらりと身体が傾いて、靴の裏が地面から離れる。傘を放り出してとっさに手すりを掴むこともできず、私は階段から派手に転がり落ちてしまった。ドサッという音とともに頭に激痛が走る。道行く人が階段から落ちてきた私をギョッとした目で見るだけで、安否を気遣う人はいなかった。
珍しく今日はあれこれと埃を被った過去の思い出に気を取られていた。注意散漫になっていたせいか赤信号で横断歩道を渡ろうとしたり、何人の人とぶつかっただろう。挙句の果てには階段から転げ落ちる始末。
「いったた……」
痛みを堪え、なんとか立ち上がろうとして体勢を整えようと顔をあげたときだった。
「あ……」
視界がぐにゃりと歪んで一気に脱力したかと思ったら、シャッターを閉められたみたいに目の前が真っ暗になった――。
ぐらりと身体が傾いて、靴の裏が地面から離れる。傘を放り出してとっさに手すりを掴むこともできず、私は階段から派手に転がり落ちてしまった。ドサッという音とともに頭に激痛が走る。道行く人が階段から落ちてきた私をギョッとした目で見るだけで、安否を気遣う人はいなかった。
珍しく今日はあれこれと埃を被った過去の思い出に気を取られていた。注意散漫になっていたせいか赤信号で横断歩道を渡ろうとしたり、何人の人とぶつかっただろう。挙句の果てには階段から転げ落ちる始末。
「いったた……」
痛みを堪え、なんとか立ち上がろうとして体勢を整えようと顔をあげたときだった。
「あ……」
視界がぐにゃりと歪んで一気に脱力したかと思ったら、シャッターを閉められたみたいに目の前が真っ暗になった――。



