怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

『大人の男の人に「聖ちゃん」なんて駄目よ』と母にきつく言われ、それから“相良さん”と呼ぶようになった。なんとなくよそよそしくて違和感があったけれど、自分の気持ちを整理するためにもそのほうがよかったんだと今なら思える。

確か私の八つ上だから、今は三十五かぁ……。もう十年近く会ってないし、立派なお医者さんになって頑張ってるんだろうな。

どうして今日に限って相良さんのことばかり考えてしまうのだろう。もう過去にフラれた人だし、いまさら会ったとしても向こうはもう私のことなんか覚えていないかもしれないというのに。
専門学校時代にいい雰囲気になった人はいたけれど、いつも心の中に相良さんがいてうまく恋愛ができなかった。

はぁ、こんなに忘れられない人っているもんかなぁ。

私の密かな夢は大好きな人と幸せな家庭を築き、毎日手料理を作ってあげること。それで、「やっぱりお前が作る食事が最高だ」なんて言われて……。

そんな日が果たしてやってくるのだろうか。