「そうなの、よく覚えてたね。実は今度からここの脳神経外科の先生の営業担当になったのよ」

「え? そうなの?」

由美は大手製薬会社である堀川製薬のMRで、確か両親とも薬剤師だった。親の背中を見て育ったのか、由美も同じく薬剤師だ。美人で頭も良く“才色兼備”とはまさに彼女のことだ。

「脳神経外科……」

「うん、相良先生って知ってる? イケメンだって聞いてちょっと楽しみだったりするんだよね」

いたずらっぽく笑う由美はなんと言っても可愛い。なにをしても世の男性から許されそうなタイプだ。高校時代によく告白されてモテモテだったのを覚えている。

「相良先生知ってるよ。腕がいいって評判の先生だから」

「そうなんだ。今日は担当替えの挨拶に来ただけ。早く来すぎちゃったからコーヒーでも飲みながら時間潰そうかと思ってたんだけど、まさかここで真希に会うなんてね」

そう言いながら由美はスマホで時間を確認する。