怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「俺の母親も料理なんてする人じゃなかったからな、だからお前の親父さんたちの作ってくれる食事がたまに恋しくなる。あ、お前のオムライスもうまいけど」

そう言いながら車のキーを手にしてニッと笑う。

相良さん、きっとお母さんの手料理なんて滅多に食べたことないんだろうな。

そう思うと相良さんの笑顔になんだか切なさがこみあげてきた。

手作りの料理が食べたくて、だからうちの店に通ってたの?

彼は学生時代、よくおのだ屋に来てくれた。常連客は近所のサラリーマンが多かった中、学生で週に三日も通ってくれていたのは相良さんくらいだ。

「わかりました」

「ん?」

「私が相良さんの食事のお世話をします」

「え?」

目を点にしたままじっと私を見つめ、「なんだって?」と相良さんが動きを止める。

そうだ。相良さんは私が歩道橋で転んで頭を打ったとき、助けてくれたばかりか入院費まで出してくれた。自分ばかり彼に甘えられない。何かできないか考えた挙句、やっぱり私にできることといえば料理くらいだ。

「それ、ほんとか?」

「え、ええ。うわっ!」