怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「悪い、朝イチでカンファレンスが入っているんだ。もう行かないと時間がない」

相良さんは慌ただしくシャワーを浴びて服に着替えた後、スマホをチェックする。

時刻は八時。

私もこのくらいの時間にいつも家を出て、職場に向かっている頃だ。

「あの、いつも朝食とかどうしてるんですか?」

相良さんがシャワーを浴びている間、少し部屋の周りを見せてもらった。

キッチンはすごく充実してるのになぁ。

リビングの奥に大理石のアイランドキッチンがある。黒光りするキャビネットの下に間接照明が仕込んであって陰影がお洒落な印象だ。業務用かと思うようなオーブン、そして作業がしやすそうなスペースにシンクも広い。しかもナイフの種類も豊富で器具もひと通り揃っている。けれど、どれも新品同様なくらいにピカピカと光っていて、それは普段、相良さんが料理をしない。ということを物語っていた。

こんなにいい設備が整っているのにもったいない! このひと言に尽きる。

「朝食なんて摂らないな。コーヒーで済ませる」

「朝はしっかり食べなきゃだめですよ? 一日の始まりは朝食からって言うじゃないですか、それに医者が倒れたりなんかしたら患者さんに対して全然説得力ないですよ?」

職業柄、食に関してはうるさいのは自覚しているけれど彼の場合、仕事量に対して全然エネルギーが足りてないんじゃないかと心配になってくる。

「まぁ、な。お前の言うことはもっともだ。けど、俺が料理しないことなんてキッチン見たらわかるだろ? 何を隠そう俺は料理が苦手だ」

もう、そんな自慢げに言わないでよ。