怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

いくらなんでも急すぎるし! まだ全然心の準備できてないし! いやいや! 心の準備って私は相良さんとは――。

「ん?」

ズシッとさらに体重がかかったところで異変を感じた。

「あの、相良さん? もしもーし」

背中をポンポンと軽く叩いても反応がない。身体にまったく力が入っていないみたいだ。
やだ! どうしちゃったの!?

まさか、相良さんの身体になにかあったんじゃ。

「相良さん? 相良さん! さがら――え?」

慌てて身じろぎしたところで、鼻からスースーという寝息のような呼吸が聞こえてきてピタリと思考が止まる。
もしかして、寝てる?

何度も身体を揺すぶっても「うーん」と唸るだけ。相良さんは私に覆いかぶさりながら完全に寝ていた。

もう! 相良さんってば、びっくりさせないでよ……。

時間に余裕があるとはいえ、こんなにすぐ寝息を立てるくらい寝落ちするなんて実際のところ仕事はかなり忙しく疲労も溜まっていたのだろう。

彼の身体に異常がないとわかり、はぁぁ、と安堵のため息をついて窓の外へ視線をずらすと大きな満月が煌々と瞬いていた――。