怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

酔いが醒めたなんて気のせいだった。フローリングに身体ごと倒れこむ痛さを想像してギュッと目を閉じる。が。

あ、あれ?

瞬時に全身が何かに包み込まれた気がして、恐る恐る目をうっすら開けると。

「ったく、これ以上頭を打ってどうすんだよ」

心臓が跳ね上がるくらいに相良さんの顔が近距離にあって目を瞠る。そして、私が後ろへ倒れこむ前に相良さんが身体をフローリングから守ってくれたと理解する。

「ほんと、ドジなのは昔から変わらないな」

私を咎める相良さんの唇に視線が行くと、初めてキスをされたときの光景が一気に蘇った。

「あ、あの」

「なぁ」

すぐに身体を起こして離れるかと思いきや、話を続ける彼にその気配はない。むしろ体重をかけられて逃げられなくしているようにも思える。

「俺も酔ってはいないとはいえ、酒が入ったら……我慢できない」

しっとりと低い声で甘く囁かれ、その艶めいた揺れる瞳に耳から全身に小さな震えが走る。

「相良さ――」

「二人きりになったら色々聞きたいことがあったんだが……もう限界だ」

そう言いながらゆっくりと相良さんは私の肩口に顔を埋めた。

「ひゃっ!」

首筋に彼の吐息がかかって妙な声が出てしまった。

このまま流されて相良さんと……そういう関係になっていいのか、自問自答する。

相良さんってこんな肉食だったの?