怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「本当に酔ってるだけか? ほかに四肢が痺れたり、ものが見えづらかったりしないか?」

「いえ、大丈夫です」

相良さん、私が頭を打った後遺症のことをまだ気にかけてるのかな。

支えられたまま玄関から伸びた廊下をゆっくり歩く。突き当たりのドアの向こうはおそらくリビングだろう。

「わぁ、すごい」

リビングのドアを開けた瞬間、自動で部屋の照明がパッとついて、そして思わず足を止めた。

相良さんの住む部屋は4LDKでリビングは二十畳くらいの広さがある。廊下から入って真正面の大きな窓からは新宿の夜景が一望できた。一人暮らしには広すぎるリビングには大型の壁掛けテレビとL字のソファー、それにダイニングテーブルと飾り棚が置かれているばかりだ。散らかっているというわりに物自体は少なく、声もよく響く。

「いい所に住んでるんですね、毎晩こんな綺麗な夜景見られるなんて羨ましいです」

「だろ? 夜景だけは毎晩見ていても見飽きないから不思議だ。横にならなくていいのか?」

「はい、だいぶ酔いが醒めてきたみたいで……きゃあ!」

相良さんに笑顔を向けたまではよかったけれど、足元に分厚い本が置いてあることに気づかず真後ろへ身体がよろけてしまった。

あぁ、またあのときと同じだ。

なにも掴まることができず頭を打って……。

私、全然大丈夫じゃない。