怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「私もそのご家族と同じ考えかもしれません。どんな姿であれ、父がまだ目の前で生きているって感じられるし、会いに行くとニコッて、笑ってくれるときもあるんですよ」

その微妙な変化は家族にしかわからないのかもしれない。お見舞いに行くのは辛いと思うこともあるけれど、決して面倒くさいとか嫌だと思ったことはない。むしろ今度また父の病院へ行くことを思うと楽しみでもある。そう思うと、自然と笑みが浮かんでくる。そんな私に相良さんも微笑み返した。

「医者は神様じゃない。死んだ脳細胞を百パーセント回復させることなんてできない。だけど、そんなふうに笑ってくれる患者の家族の顔を見たら、自分は間違ったことをしていないって思えるんだ。親父さんだって生きながらえたってことはきっと意味がある。俺が言いたいことは家族のエゴなんかじゃない、悩む必要なんかないってことだ」

相良さんに言われると、自分の中で燻っていた悩みや迷いすべてのマイナスの念が徐々に解きほぐされる。そして暖かな感覚に包み込まれ、頭がぼんやりしてきたかと思うと次の瞬間、目から怒涛の如く涙が零れ落ちた。