怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「千田記念病院に俺の同期がいるんだ。まぁ、医者とはいえ家族でもない部外者だから、詳しい患者情報の開示はしてもらえなかったけどな」

情報は得られなかったけれど見れば父がどういう状態なのかなんてすぐにわかる。と言う意味を込めるように、相良さんは力なく言葉の語尾を弱めた。

「私、いまだにこれでよかったのかなって思うときがあるんです」

「え?」

ふいに飛び出した言葉に虚を突かれたみたいになって、相良さんが頬杖から外した顔を私に向けた。

「父は自分が高血圧だってことを知ってたし、だからポックリ逝くならそれが一番いいなんて冗談言ってたんです。でも、そんなのこと残された家族にとっては辛くて……命は繋ぎ留めたけど、これって私のエゴなんじゃないかなって」

あぁ。私なに言ってるんだろう。絶対酔ってるよね?

気がつけばワインをグラスで三杯も飲んでいて、その前にジョッキでビールを飲んだ。ほろ酔いどころか完全に酔っている。

「父を見ていると本当はすごく辛いんです。部屋の電気消して真っ暗になっただけで悲しい気分になったり、ふとしたときに父が元気だった頃のことを思い出したりして」

父が倒れてからすべてが変わってしまった。母と楽しそうに談笑している父の姿はもうない。声も聞けない。三年経ってもふとしたときにものすごく悲しい感情がやってきて、いまだに思い出してはひとりバスルームで泣いたりする。