怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「うちの病院に聖ちゃ……相良さんが一年の契約で常勤医として働いてるんだよ。先週からなんだって」

当たり障りのないようにかいつまんで言うと、それを聞いた母は目を丸くして案の定驚いた顔をした。父もなんとなくピクリと反応したような気がする。

「え? 相良さんって、昔うちの店によく来てたあの相良聖一さん? あらぁ、そんなすごい偶然もあるのねぇ。ずいぶん長いこと会ってないけれど……そう、立派にお医者さんになったのねぇ」

懐かしむように顔を綻ばせ、「まぁまぁ」とか「あらー」とか、母も信じられない気持ちみたいで何度も同じことを口にしていた。

「ずっと海外にいたみたい。今はうちの病院で勤務してるけど、いずれは実家の病院を継ぐんじゃないかな。元気そうだったよ」

面会者用の椅子に座る母の横に椅子を付け、私も父の顔色を窺いながら腰を下ろす。

「相良さん、学生の頃はご実家の病院を継ぐことにずいぶんプレッシャーを感じてたみたいだったから……あまり愚痴をこぼさないし、色々ひとりで抱え込んでないかお父さんといつも心配してたのよ」

そうだったんだ。