怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

呼吸をするのを忘れていたことを思い出して、喉の奥からくぐもった声が出た。

されるがまま唇を奪われて相良さんの吐息をわずかに感じ、頭がくらくらして何も考えられなくなる。全速力で疾走したみたいに心臓がバクバクしてきて、彼の長い睫毛が微かに触れた。

「な、ななんで? 今、キ、キス……した?」

唇が解放されると一気に空気が肺に入り込んできて噎せる。ゼイゼイと大きく上下する胸を抑え込み、なんとか落ち着かせている私を見て相良さんが顔を覗き込む。

「可愛いな……」

いつになく低く甘いトーンで囁かれ、硬直する。いまだに目を大きく見開いたままの私の顔が、相良さんの艶めいた瞳に映っているような気がした。

「どうした?」

どうしたもこうしたもいきなりキスされて動揺しない人なんかいない。しかも、初めて人の唇の温もりに触れたからなおさらだ。

「……初めて、キスしたので」

「え?」

いまにも火が出そうな顔を伏せて小さな声で言うと、相良さんが一瞬驚いた顔をした。