怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「ありがとうございました。すみません、わざわざ送ってもらっちゃって……色々お話ができてよかったです」

父の話をしたら湿っぽくなってしまったけれど、彼と一緒にいたら不思議と泣かずに笑うことができた。

「私、少し安心しました」

「え?」

彼が少し驚いた顔をして私に視線を向ける。

「医者になってツンツンした人になっていたらどうしようかと思いましたけど、十年前とちっとも変ってなくて、ホッとしちゃいました」

こんなこと言って、だからなんだと言われればそれまでなのだろうけれど、正直な気持ちを伝えることだけで満足だった。

時刻は二十二時を回っている。相良さんは病院近くのマンションで暮らしているようで、またここから折り返して帰るとなるとかなり遅い時間になってしまう。

「じゃあ、おやすみなさい」

名残惜しいけど、ここは早めに切り上げよう。

「ちょっと待て」

ニコリと笑って助手席のドアを開けようとしたそのときだった。抱きしめられるように運転席のほうへ身体が引き寄せられたかと思うと、唇に温かな感触が覆った。

……え? な、なに?

「んうっ」