怜悧な外科医の愛は、激甘につき。～でも私、あなたにフラれましたよね？～

秋も深まり、空気が乾燥しているせいか喉の奥が不快だ。

『真希ちゃん、相良先生のだからってずいぶん気合いの入ったオムライスじゃない？　愛情たっぷりってやつ？』

卵を普段二個のところを三個使い、滑らかな仕上がりになるように何度も裏ごししていると、ニヤニヤしながら義さんに茶化された。しっかりケチャップでクマさんの顔を描いて、これを見たときの相良さんを想像すると思わず頬が緩む。

地下駐車場の入口でしばらく待っていると、コツコツと踵を鳴らしながらこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。

「お疲れ様です」

「あぁ、待たせたな。行くか」

「え？　行くかって、どこへ行くんですか？」

てっきりここでオムライスを渡して帰るつもりにしていたから、予想外のことを言われてきょとんとしてしまう。

「ここでオムライスもらって、はいさよなら、ってそんな薄情な男に見えるか？　中野の家まで車で送ってやるから、こっちだ」

相良さんがポケットからリモコンキーを取り出して押すと、ピッと電子音がなって一台の白い高級車のロックが解除される。

「あの、オムライス、先に渡しておきますね」

「お、サンキュ。お前が作ったやつ、うまいんだよな」

ビニール袋の中を覗き込んで顔を綻ばせている。